横浜「欠陥マンション偽装事件」マンション建設のプロが語る本質とは

FDJコラム 越川健治

マンション建設のプロフェッショナルに聞く、「欠陥マンション偽装事件」の本質

連日、ニュースで取り上げられている神奈川県横浜市の「欠陥マンション偽装事件」について、マンション建設のプロである「株式会社土地活用」代表の越川健治氏にプロの見地からご寄稿いただきました。

今回の横浜のマンションが傾いたというニュースは、ワイドショーのトップですら扱われている事件で、当社も年間6-7棟ではありますが、地主様等のマンション開発をマネジメントする身として興味深く推移を見守っています。

当初、マンションが傾いたと聞いた時、横浜はマンション開発をしている人間にとって崖地や土丹の有無等の諸々の原因により、近いエリアであっても支持地盤の紛れが大きい地域として常識ですし、きっと開発担当者の認識不足で敷地内で支持層が荒れていたのを見過ごしたのだろうな思っていましたが、予想通り建物の中で支持層に届いていない杭が何本かあったとのことです。

熊谷組が、パークスクエア三ツ沢公園で傾かせたのも横浜ですしね。

当社の「コンストラクション・マネジメント」で横浜でマンション開発したときは、水平方向に”8.8m×16.5m”の規模の建物であったにも関わらず、オーナー様に「横浜は地盤の紛れが大きい」旨を伝えた上で2か所のボーリングデータを取るように説得し、実際に2か所で試験を行い、更に、事前に収集していた隣接地のデータを加えた3点のデータを意匠設計事務所経由で構造設計事務所に渡して構造計画を進めてきました。

今回の事件の全貌が見えて来るに、世間では「旭化成が全て悪い」まして「旭化成の一担当者が悪い」という風潮になってきていますが、 このような支持層に紛れの多いことで有名な横浜と言うエリアですら下請に「地盤調査を丸投げ」していることが「三井不動産の責任」として有ると思います。

今の感想としては、「旭化成の杭なんか使わなくて良かった」ですが、まず第一に、事業主が地盤調査を直接手配でやらずに、 施工会社の下請杭屋に工事をやりながら地盤調査もやらせてる(やらせることを認めている)事が根本的な問題でしょう。

これだけの開発をするのであれば、本来、事業主である三井不動産が構造設計者に地盤調査が必要なポイントを確認しながら ”建物直下の両端と真ん中を少なくとも30mピッチで” 第三者の地盤調査会社に事業者自ら依頼し、構造設計を始める前に事業者データを取って構造設計者に渡さなくてならない。

私も、一時期、三井程の規模の無いディベロッパーですが、マンション開発の仕事をしていることがありましたが、当然のように業務の一環として地盤調査会社とやり取りをし、必要な調査箇所数を設計者の判断を仰ぎながら調整しておりました。

事業主がとったデータを元に構造設計者が構造設計をし、その図面を元に請負契約をしていれば、 当然のように図面通りに施工するので今回のようなことは起こりえなかったとおもいます。
もし仮に、それでも1点の地盤で地盤調査・図面通りの深さで支持層に達していない場合は、 普通は、施工者も土質のサンプルを見比べながら工事をしているので直ぐに判りますので、 直ちに工事を止め、図面で想定していた支持層では実際の支持層に届かない事を事業主に伝え、同時に実際の支持層へ到達させるのに幾らの追加費用が掛かるかを事業主へ提出し、事業主のサインが無い限り工事を進めないというのが、本来の筋道です。

三井住友建設が地盤調査も何もかも、勝手にやってくれると言ったのかどうか知りませんが三井不動産が根本を怠っていることや、事後の対応も施工者の下請に任せていることということも含め、殿様商売だなと、どうしても感じてしまいます。

私の祖父も三井物産にお世話になっており、三井は好きな名前ではありました。今回、三井不動産が半分被害者面をしてるが何もかも丸投げしてるのであれば、ただの長い事、”先代、先々代・・・と、関わってきた人々が築き上げてきた 三井の名前”がブランド名として、くっついて売っているだけと見られても仕方ないと思います。

また、三井住友建設においても、旭化成のふざけた担当者に 虚偽の報告を上げられたという不運があったかもしれませんが、 下請の杭施工者と地盤調査会社を分けなかったことは問題ですし、 三井住友建設の構造設計者や現場監督が、杭先端部の土質を他のサンプルと見比べていないことの責任を問われるべきでしょう。

地中の事は実際の工事をするまで解らない事は多いですが、追加費用を認めもらえない事業主も出てきかねないので、 当社では、地中に関わる”土壌汚染”、”地中障害”、”地盤調査結果と実際との差異(水位も含めて)”については、 追加費用が発生する旨を請負契約時にわざわざ読み上げをするようにしています。

これからマンションを建てようとする事業主は、 土の中の事に関しては追加費用が発生することもあることは認識したうえで、 むやみに工事を止め無いように、快く支払い土壌を作る必要があると思います。

加えて事業主の金銭的な押し付けがある場合に、中には旭化成の担当者のように揉み消そうとする馬鹿が現れる可能性もあるのだなと、 又、何か金銭的なことが発生したときに、 プロジェクトでの立ち位置として上の人間が 事業主に対して正しく追加費用に関して説得してくれるという信頼関係が 下で揉み消されないために必要になってくるのだと、 当社としても改めて学ばせて頂きました。

こんな不祥事があったら、当社の規模であれば一瞬で潰れてしまいますしね。

マンション購入者においては、正直、今回のケースについては事前に防衛するのは難しいでしょう。当然のように三井不動産のブランドを信用して割高であっても買ったのでしょうが、やっている仕事自体は結局、ブランドに物を言わせた丸投げであったことが世間的な認識に変わってしまったわけですから、さぞ悔しい思いをされている事でしょう。

今後、購入前に防衛をしたいのであれば、ボーリングデータを何処の箇所でとってあるかぐらい、営業マンに提示を求めるべきかもしれませんし、購入者からのそういう要望は多くなっていくことでしょう。

最後に、同じ建設業に身を置くものとして、今回の一部の悪意ある担当者の不祥事により、業界全体が疑念の目で見られてしまう事が残念でなりません。各々が、プライド・正義を持って、目の前の仕事に取り組んでいかなくてはならないと改めて強く感じています。

株式会社土地活用 代表取締役 越川健治
BLOG:http://kkenji1.blog63.fc2.com/
WEB:http://kabu-tochikatsuyo.com/
「建築主様に建築の究極の楽しさを満喫していただく」を理念に、土地活用・土地売買による新築不動産投資について、コンストラクション・マネジメント(CM)方式を駆使した「建設費のコストダウン」に定評がある。現在、数多くの不動産投資家から支持を得ている。」

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