【FDJ/不動産情報パノラマ】 【住宅・不動産業ニュース】

<今月の住宅・不動産業ニュース>

ホームページ実用化への挑戦/電子メールをどう活用するか
98年8月〜9月号


 住宅・不動産業界でも、インターネットの実用化が急速に進んできた。97年秋頃から一般ユーザーのホームページへのアクセスが急増する動きを見せはじめ、それにともなって分譲マンションや仲介の成約成果も確認できるようになっている。

 そうした中で、(株)不動産データ&ジャーナル社では、東京・新宿区の太平ホール(第2太平ビル4階)で、『経営トップセミナー』を開き、<インターネットの実用化をめぐる戦略>――などを探った。

 ここでは、インターネット実用化の第一線に立つ若手によって行われた徹底討論「ホームページの開設と営業促進への活用方法」を、〈前編〉〈後編〉とに分けて報告する。

 <徹底討論/インターネットの実用化をめぐって> 

はじめに/住宅・不動産業の第一人者が語る戦略
前 編/インターネットの実用化をめぐって
後 編/電子メールを営業にどう活用するか


 はじめに/住宅・不動産業の第一人者が語る戦略 

 この討論会は、(株)大京/鈴木徳之・事務企画部課長、(株)アドパーク/平田 実代表取締役社長、(株)ネクスト/井上高志代表取締役社長――が参加し、(株)ヒロ・アンド・アソシエイツ代表取締役/磯部裕幸氏(不動産鑑定士)の司会で105分にわたって、5月20日に行われた。

 〈徹底討論105分〉の〈前編〉は、〈1〉インターネットへの取り組みの現状〈2〉ネットワークとデータベースを融合〈3〉ホームページ運用の問題点は何か〈4〉ホームページを機能させる要点とは――について、〈後編〉では〈5〉電子メールの活用・実用化に向けて〈6〉電子メール活用の現状と問題改善策〈7〉今後の業界はどう変化していくのか〈8〉対応戦略の方向性を考えてみよう!――として、内容を整理している。


討論会の会場風景(太平ホール/第2太平ビル)

討論内容
  〈1〉インターネットへの取り組みの現状   
  〈2〉ネットワークとデータベースを融合
  〈3〉ホームページ運用上の問題点は何か
  〈4〉ホームページを機能させる要点とは
  〈5〉電子メールの活用・実用化に向けて
  〈6〉電子メール活用の現状と問題改善策
  〈7〉今後の業界はどう変化していくのか
  〈8〉対応戦略の方向性を考えてみよう!

討論会出席者
■(株)大京/事務企画部課長 鈴木徳之氏
■(株)アドパーク/代表取締役社長 平田実氏
■(株)ネクスト/代表取締役社長 井上高志氏

●司会/(株)ヒロ・アンド・アソシエイツ(不動産鑑定士)磯部裕幸氏

(株)大京・事務企画部/鈴木 徳之課長

1962年、宮城県生まれ。85年、防衛大学校理工学部卒。同年、大京観光(株)〈現(株)大京〉へ入社。情報システム部、企画部を経て現在、事務企画部課長。

(株)アドパーク/平田 実社長

1963年12月、山口県生まれ。コンピュータ・ソフトウェアの(株)千代田経営管理システムへ入社。93年、取締役。96年9月、(株)アドパークを設立、代表取締役社長に就任。

(株)ネクスト/井上 高志社長

1968年11月、神奈川県生まれ。90年3月、青山学院大学経済学部卒。95年10月、不動産業特化型インターネットサポート企業(株)ネクスト設立、代表取締役社長に就任。

(株)ヒロ・アンド・アソシエイツ/磯部 裕幸代表

1950年、愛知県生まれ。74年3月、早稲田大学政経学部卒。78年、不動産鑑定士。87年、(株)ヒロ・アンド・アソシエイツ代表取締役。ホームページ『リアルタウン・ジャパン』を運営。

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 前 編/インターネットの実用化をめぐって 

〈1〉インターネットへの取り組みの現状
〈2〉ネットワークとデータベースを融合
〈3〉ホームページ運用上の問題点は何か
〈4〉ホームページを機能させる要点とは

〈1〉インターネットへの取り組みの現状

〈1〉の要点
(1)年間で262件のマンションを成約
(2)社内システムと連動し運用費ゼロに
(3)発展と成功を見越してスタート!
(4)消費者を裏切らないシステムとして
(5)最近の反響は3カ月間で4万件に
(6)インターネット電話を販促に活用

 磯部 この討論会のテーマは、〈インターネットの実用化をめぐって〉という事ですが、営業促進のツールとしては電子メールの活用といったことも重要になってきますので、ホームページの現状と合せて討論を進めてまいりたいと思います。

 ご案内のようにホームページというのは、基本的な性格として1つの情報を全地球的な規模で不特定多数の人に対して伝えるという機能を持っている。一方、電子メールというのは基本的に一対一のコミュニケーションの道具、ワン・ツー・ワン・マーケティングのツールとして有効なものです。

 そうした基本的な性格を踏まえた上で、最初は前編として〈こう取り組んでいる〉といった角度で、(株)大京の鈴木さんからまずお話をうかがわせて下さい。

 年間で262件のマンションを成約 

 鈴木 当社のインターネットへの取り組みというのは、95年の12月にWebを立ち上げまして、2年半がたっています。

 当初は情報システム部というところで運用していたのですけれども、現在は事務企画部というセクションで運用しています。
 基本的な取り組みとしては、一般的な企業広告としてではなくて、最初からコンセプトを販売促進の一つの手法として位置づけてきました。

 ところが、最初の半年ぐらいはほとんど契約がなかった。その後、どうやったらアクセスが増えるのかとか、こうやったらもっと訴求力が高まるのではないかと一つ一つ工夫をしまして、その結果、平成10年3月期の1年間ではホームページ閲覧者からの成約が262件、売上でいくと105億円という数字をあげられるようになってきている。

 ホームページを見てモデルルームに来訪された方とかの数字はカウントしていませんので、実際の成果というのはこの4〜5倍ぐらいにはなるでしょう。

 社内システムと連携し運用費ゼロに 

 しかし、運用のコストというのは、最初から社内の情報システムとの連携を設計思想に取り込んでおりますので、新たに出費はほとんど発生していない。今でもホームページのための作業を新たに作り出さないという事を明確なコンセプトとして徹底しています。
 ですから、Web関係の担当者というのは私ともう1人、実際には2人だけになっている。そして、ホームページの制作そのものも外注しないでほとんど内作ですませている。

 投入資金というのは回線使用料を除くと皆無に近い形になっていますし、会社としてホームページに重点は置いていますけれども、人員的には常にコストミニマムで運営している。
 そのために、自動的なデータの入力とかアップロードだとかの仕組みを作って人員的な手間という部分は、ほとんど排除できるような形でやっているのです。

 磯部 ホームページでのマンション売上が100億円というのはすごい数字ですが、そうした結果の前に何があったのかといいますと社内のシステムというものが最初にあって、その結果ホームページやWeb関係の運用が非常に省力化、低コストでできたという訳ですね。
 引き続いて、(株)アドパークの平田さんからお願いします。

 発展と成功を見越してスタート! 

 平田 当社は、2年前の96年9月に設立スタートしました。会社の事業開始のきっかけとしては、私自身がもともとシステムエンジニアで10年以上もやってきましたから、インターネットについても早くから取り組む事ができたと言えます。

 当時サポートしていたクライアントの仕事の中で、私はシステムエンジニアという専門家の立場からインターネットを中心に据えたマルチメディアの事業展開はうまくいくのではないかと思っていました。
 当社の事業は、あくまでもインターネットを中心としたマルチメディア即応媒体の情報サービスを提供していこうということです。

 具体的には、ホームページ、パソコン通信、FAXスサービス、また街頭端末によるインフォメーションセンターなどの展開です。

 街頭インフォメーションセンターは現在、新宿と渋谷、名古屋と福岡に設置して効率的な情報発信が図れるようにしています。

 消費者を裏切らないシステムとして 

 そういったことで、すでにインターネットを中心にしたマルチメディアを1年半ほど活用してまいりましたが、活動の内容としてはまずモニターの不動産会社に参加していただき、不動産会社の事業所でどのようなシステムを導入すれば、マルチメディアのサービスが実現するのかという検証を積み重ねてきました。

 そして、現在の『アドパーク/不動産』というパッケージのサービスシステムを開発してきたのです。
 ただし、Webに対する取り組みとグラフィックだとかについては、まだあまり器用に展開できておりません。

 私どもでは、まず第一に媒体としてしっかりと機能するものを作っていこうということであり、消費者のみなさんからいただいたアクセスの期待を裏切らないようにしていかなければならないと考えているからです。

 また、消費者のみなさんにいただいた反響による成約をきちんと成立させていこうではないかということで、物件データの充実とアクセスの確保に徹底した努力をしてまいりました。

 最近の反響は3カ月間で4万件に 

 現在の登録物件数の実績としましては、20万件のデータベースをリアルタイムに取り扱えるようになっています。

 まず、クライアントにはデータベースに物件を登録していただき、空室になったらお客様を募集していただくということで、賃貸住宅でしたら入居可能、そして売買資産であればいつでも売れる状態になっている。
 そして、登録物件20万件のうち8万9,926件が、お客様にすぐ見せられる形で公開されています。

 不動産物件の取り扱い情報としましては、この9万件という数字は、わが国ではインターネット最大のものになっていると言えるのではないでしょうか。

 そして、そこに参加していただいております不動産会社の事業所の数は約1,200事業所にのぼっています。

 次は、皆様の一番関心のあるところだと思いますが、電子メールによる問い合わせの数は今年1月から3月までの3カ月間に約3万件にのぼり、実数を申し上げますと2万8,964件となっている。
 ただし、これは受付メールの実績のみでありまして、このほかに電話による問い合わせなども当然事業所に入ってくる。

 ある機関の調査では、ホームページ全体の営業反響数は受付メールの1.4倍になるという数字がありますので、全体の反響は4万件以上にのぼると考えてよいでしょう。

 インターネット電話を販促に活用 

 実績としては以上ですが、インターネットの関連技術という点では実験的な意味合いもあるのですが、最近インターネット電話というものを街頭端末から利用できるようにしました。
 これは、日本では当社しかありませんが、もしかするとこのような試みは世界でも類を見ないのかもしれません。

 設置場所は渋谷の東急109、新宿小田急ハルク、名古屋パルコ、福岡天神イズムの4カ
所で、インフォメーションセンターとして出展しているマルチメディア情報館『CAN』のコーナーに導入しています。
 これは、インターネットをコミュニケーションの手段として使う1つのやり方ですが、街頭端末でWebからデータベースを検索していただくと、当然情報の一覧が出てきます。物件の情報にはそれを発信している不動産会社へつながるボタンがあり、ボタンを押すとその不動産会社にすぐに問い合わせができるのです。

 もともと『アドパーク/不動産』のパッケージではリアルタイムに事業所からWebに情報を発信することができますから、発信された直後に消費者の方に物件を見ていただいて、ユーザーはその場ですぐに問い合わせをすることができる。
 そういう意味では、時間的効率は既存の媒体とは比較にならないぐらい高いと言えるでしょう。これは、電子メールも同じです。インターネットがどのように私たちの生活に役立つかという点では、コストの問題よりも時間の問題が大きい。

 とくにコミュニケーションの時間的な効率向上、そして結果として人件費やコストの低減がはかれるということが言えるのではないでしょうか。


〈2〉ネットワークとデータベースを融合

〈2〉の要点
(1)物件検索が可能なシステムとして
(2)200会員が2万件近い物件を登録

 物件検索が可能なシステムとして 

 磯部 次は、(株)ネクストの井上さんにお願いします。

 井上 私どもでは、業界・企業の不動産物件情報と一般の個人ユーザーを結び付けていく事で、リアルタイムなネットワークを形成していくことを目ざしています。
 情報ネットワークと言うと難しく聞こえるかもしれませんが、要はインターネットの特性である情報のオープン化とか、機会の均等化、それに双方向性というようなものを生かして、データベースを構築していこうということで、現在は『ホームズ・サーチ』という物件検索サイトを運営しています。

 (株)ネクストという会社を設立したのは、今からちょうど1年ほど前で、サービスを開始してからは約11カ月がたちました。

 不動産会社の方が、インターネットに取り組むとき最初につまづくのはプロバイダーへの接続ではないかと思うのですけれども、まずその導入サポートから行っています。
 それから、どんなホームページを作ったら営業促進になるのか、というようなコンサルティングに入りまして、実際にホームページの制作も請け負っています。

 そして、制作するホームページの中に当社独自の物件情報検索プログラムを組み込んで一般のユーザーから見た場合には、その会社が自前で物件情報が検索できるホームページを運営しているというような見せ方をしていく。それを集約したものが、私どもの『ホームズ・サーチ』という媒体になっているとお考えください。

 この他、いまエクストラネットという形で、日本賃貸住宅管理業協会さんの神奈川県支部のネットワーク立ち上げをお手伝いさせていただいておりまして、これをぜひ全国的な規模のネットワークに育てていければいいなと考えているところです。

 200会員が2万件近い物件を登録 

 『ホームズ・サーチ』の現状を申し上げますと、会員数は5月末で北海道から九州まで200会員あり、登録されている物件数は1万6,000件から1万7,000件で推移しています。
 登録されている内容としては、賃貸物件が約80%、それから売買物件が20%という割合になっています。

 アクセス件数は、非常に業界の中でも曖昧なカウントの仕方になっているのですが、一応ページが見られた回数というものをアクセス件数と呼ぶとするならば、大体いま月間平均で90万件のアクセスがありますから、1日にしますと3万件ということです。

 それから、検索の回数としては、一月に平均して大体10万回あります。そして、電子メールでの反響率というのは、最近の4カ月間で約10.6%という数値になっています。


〈3〉ホームページ運用上の問題点は何か

〈3〉の要点
(1)物件情報がないものは効果うすい
(2)まだ掴み切れていない利用の仕方
(3)古い物件の掲載は本質的な問題に
(4)環境づくりに時間がかかるのは残念
(5)コストが意外にかかるのも問題点だ
(6)コストを吸収できる時期は間近か

 磯部 それでは次に、「ホームページ運用の問題点」について、伺って参ります。井上さんから、お願いします。

 物件情報がないものは効果うすい 

 井上 以前、一般の不動産会社さんのインターネットに対する取り組みについて「効果的か」、「効果がないのか」、「まあまあなのか」といった5段階のアンケートを取らせていただいことがあるのですが、その結果としては「非常に効果的」と「効果的である」と答えた企業が全体の40%ほどでした。

 そのアンケートの質問項目では、検索をしやすいプログラムなり、そういったものが組み込まれているのかどうか。また、これは一番大事な事なのですが、「更新頻度がどのくらいになっているのでしょうか」という事も伺わせていただきましたが、成功している企業と言うのは、大体週に最低1回は更新をしている。それから、検索プログラムまでつけている企業では「非常に効果的だ」というように答えるケースが多くなっていました。

 ところが、失敗している企業のケースを見ると、結局はホームページを立ち上げるところまでで満足してしまっている。
 それから、ひどいものになると会社概要とかパンフレットの内容をホームページにしただけで、まるで物件の情報が載っていないと言うのも見受けられました。

 まだ掴みきれていない利用の仕方 

 私はホームページというのは、営業に積極的に使うべきだと思っていますし、会社のPRだけというのでは見に来るお客さんに対して失礼だと思います。

 しかし、アンケートの結果が非常に嬉しかったというか救いだったというのは、「失敗している」と答えた企業も含めて、「今後のインターネットへの取り組みをどうされますか」という事をまた5段階で聞きましたところ、「積極的に活用していきたい」と答えた企業が70%もありました。

 これは、各社ともインターネットに非常に興味・関心を持っていて、営業促進にも使っていきたいと考えているけれども、「それでは一体どうしたらいいんだろう」という事が、まだまだうまく掴みきれていないのではないかというふうに感じました。
 不動産業の各社が運営しているホームページの問題点というものを申し上げさせていただきますと、まずはデータの更新が非常に遅いということがある。それから、せっかくインターネットというものを使うのだったら、その特性を生かしてユーザーに向けてのサービスという意味で、ぜひ写真とか間取り図も掲載していただきたい。

 それから、正直に申し上げて、たとえば3カ月前とか6カ月前に成約した物件をそのまま載せている企業というのは、それを載せていること事態が非常に逆効果になるという心配がある。

 しかし、皆様はインターネットをやることが本業ではありませんから、私たちの方で手間を掛けずに物件情報の更新ができるような仕組みというのを、インフラとして作っていかなければならないのでしょう。

 古い物件の掲載は本質的な問題に 

 磯部 井上さんは、いま3カ月前の物件が載っているという問題点を指摘されたわけです。ところで、これはアメリカの話ですが、古い物件の掲載が実際に問題となったケースがある。コロラド州で州の不動産局に、ある業者のホームページに専属専任媒介物件が長期間にわたって掲載され続けているという訴えがあった。

 これは、専属専任の期間が終わっているのにもかかわらず、自分のところに物件があるかのように掲載をし続けたのです。
 そして、それが実際に査問検討委員会の議題になったという報道がアメリカで1年ほど前にありました。

 3カ月も前の物件を載せていると成約にもならないし、消費者からソッポを向かれますよというだけの話ではなくて、逆に業者の根本的な問題をも招来しかねないという側面も持っているのだということを、ちょっと付け加えさせていただきました。

 次は、平田さんから現状における問題点という観点で、お話を伺います。

 環境づくりに時間がかかるのは残念 

 平田 井上社長とほぼ同じような問題を感じています。
 しかし、もっと根本的な問題の一つとしましては、不動産業界でのコンピュータの普及率がちょっと遅くて、インターネットを説明する前にわれわれがどのような仕事をしているのかということを理解していただく環境づくりに時間がかかってしまうということがまずあります。

 しかし、これは仕方のないこととしまして、次は運用上の問題点ということになるのですが、先ほど井上社長も言われましたように確かにホームページを単純に立ち上げてもなかなか反響といいますか、成果が出にくいということなのです。
 これは、どちらかというとホームページそのものの限界性ではなく運用の問題点だと言えるでしょう。
 ところが、コンピュータをよく使いこなしていただいている不動産会社の人でも「インターネットはいまいちだね」言うことが多いので、ちょっと残念に感じています。

 ホームページを立ち上げるのであれば、やはり、それなりに消費者の方とコミュニケーションができる仕組みというものを工夫すべきではないのでしょうか。

 コストが意外にかかるのも問題点だ 

 あとは――これを言うとなんとなく怒られそうな気もするのですが、インターネットの運用上の問題点としまして、思ったよりお金が掛かるのですね。20万件のデータを快適に回すためには、それだけのインフラが要るということで、インフラの整備と技術者の手間と負担がしだいに大きくなっている。

また、消費者のみなさんから反響を得るために、広告もするわけですが、マス媒体の利用につきましては当然お金が掛かりますし、最近はネットの広告もそれなりの値段がしますので負担が大きくなってきている。

 一般に、「インターネットビジネスはお金が掛からない」と言われていますが、それは時間的効率の向上が大きいので費用が相殺されるということなのです。

 そして、このコスト問題の解消については、われわれはみなさんに対してできるだけ安い媒体としてのサービスを提供していくつもりですが、これはうまくやらないとほんとうの意味の効率は上がらない。
 これについては、労力の低減ということで、少なくとも運用面ので負担が掛からないように、情報システムとデータを連動させ、負担ができるだけ軽くなるような形でサービスを提供できるようにしていこうとしているわけですが、何分にもちょっとした接続にも技術者を振り向けなければならないので、その負担は決して軽いものではない。

 あとは、情報の品質です。これは2つありまして、間取り図や写真というものの充実が一つ。いわゆる品質の向上と管理です。もう一つは情報の規格化ということであり、これは消費者と不動産業界の両者にとって必要になってくるのではないでしょうか。

 コストを吸収できる時期は間近か 

 磯部 平田さんや井上さんのようなビジネスは、命を張って仕事をされている方を相手に商売をされていますので、情報のセキュリティの問題もシステムの問題も安全であるという条件でないと商売にならない。

 それらを全部カバーしていくには回線というインフラ、システムというハードウエアを含めてお金が掛かるということで、大変なご苦労があるのだろうと思います。

 しかし、お二人の会社は、お金が掛かると言いつつも情報量が増えてくる中で省力化されて、全体の中でしだいに吸収されてくる時期がやがてやって来るのではないでしょうか。
 さて、いま「お金が掛かる」という話が出たのですが、鈴木さんの場合は社内との連動が、ホームページの効率的運用にとっては非常に重要だと冒頭で言われました。

 ホームページ担当課長のお立場で、問題点はどの辺にあるとお考えなのかお話を伺いたいと思います。


〈4〉ホームページを機能させる要点とは

〈4〉の要点
(1)営業とシステムのバランスが必要に
(2)成果があっても評価は受けにくい
(3)反響には24時間以内の即応体制で

 営業とシステムのバランスが必要に 

 鈴木 いま、事務企画部というところをインターネットの主管に位置づけてやっていますが、ホームページを2年前に立ち上げた際は私はまだいまの部署ではなく、まったく違うところで仕事をしておりました。

 今も、「インターネットは宣伝部でみるべきだ」とか、「企画部でみるべきだ」、いや「営業推進でみるべきだ」という事で相変わらずまだ明確になっていません。
営業促進の実績を出しているといっても、実際の売上の2%にしかなっていないわけで、社内的にまだ存在感が得られていないというのが現状です。

 もともと事務企画部というところはシステム部門ではなくて、一般にやっているBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)という事務設計の専門部隊でありして、私もインターネットの仕事というのは全体の業務量の20%ぐらいしかやっていない。

 いずれにしても、今の悩みというのは社内的な問題ですけれども主管がないという事なのです。会社によっては宣伝部がやったり企画部がやったり、情報システム部門がやると思うのですけれども、ところがそうしたセクションのどこかが単独でやってもあまりよい結果は出せないだろうというのが実感です。

 私のところはたまたまいま事務企画部でやっていますが、営業の手順を知っていて、その上でシステムが分かっているというのが、このセクションなのです。

 当社のホームページは95年の12月に立ち上がっていますが、私が担当になったのは96年の7月で、それまではインターネットというものを全く知らなかったのですね。
 しかし、それからインターネットとはどういうものなのかという事を具体的にしっかり勉強して、事務手順と大型汎用機を融合させるという考え方のもとに全部新しく作り込んだという結果が、今につながっている
 そういう意味では、システム専門家でもなかなか結果は出せないし、販売部門の専門家だけでも結果は出せないということでしょう。

 そのへんの調整の仕方はプロジェクトチームとかいろいろあると思うのですけれど、社内的にはその両方のバランス感覚がうまく協調しあわないと販売促進としてのインターネットというのは本来のツールとして機能しないのではないでしょうか。

 成果があっても評価は受けにくい 

 あとは結果が出ているといっても、しょせんは2%の売上しかないので、社内的には非常につらい。
 予算を掛けないでやっていますけれども、たとえば名刺にURL、ホームページのアドレスを入れるだけでも主管部署と調整して1年掛かりました。
 封筒にURLを入れてくださいという話も、主管との調整に1年5ヵ月もかかり、ようやく今夏から封筒にインターネットのアドレスを載せてもらえるということで、担当としましては非常に淋しい状況が続いている。

 当社は経営陣の下にミドルマネジメントがいて会社を動かしているのですけれども、トップマネジメントのほうでは「インターネットは非常にいい」と認めていても、具体的なアクションとして、たとえば名刺にURLを入れろとか、封筒にも入れろとかそういう細かい指示はなかなか来ない。

 大きい会社はたぶん皆そういう悩みは持っていると思いますけれども、できればそういうところでは結果を出すためにはどうしたらよいのかということを、徹底的に討論したほうがよい。
 そして、横断的に動けるプロジェクトチームのような組織をちゃんと作って運用していかれた方がよいのではないでしょうか。

 データ更新のお話が出ましたけれども、当社では、いま1週間に1回の割合で自動更新をしています。やはり、実績というか契約につなげるためにはデータが新しいことと多いこと、これが鉄則です。

 反響には24時間以内の即応体制で 

 あと一番大事なのは、お客さんからアクションがありましたら、私は“鉄則・原則”といって徹底していますけれども、24時間以内に必ずリターンのアクションを起こすということです。

 当初、95年の12月にインターネットを立ち上げましてからの7ヵ月間の契約というのは、6件しかありませんでした。
 これはどうしてだったかと言いますと、資料請求があってからお客様の手元に資料を届ける用意が全然できていなかったためで、ひどいときには2週間以上掛かっていました。そうした中で6件も契約できたのは、逆にすごい事だったのだとも思いますが、その後は全部中のプログラムを組み替えて、営業部隊に情報が届くのを24時間以内にということにしました。

 そうした結果、次の月から6件ずつぐらいの契約ができて、いまは大体平均毎月25件ぐらいの契約になり、売上でいうと10億円ぐらいの数字がコンスタントにあがるようになっています。

 そういう意味では、アップ・ツー・デートにデータを更新し、どんなことがあっても24時間以内にお客さんに何らかのアクションを起こすということを確実に実行していけばかなりの効果があがるのではないでしょうか。

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 後 編/電子メールを営業にどう活用するか 

〈5〉電子メールの活用・実用化に向けて
〈6〉電子メール活用の現状と問題改善策
〈7〉今後の業界はどう変化していくのか
〈8〉対応戦略の方向性を考えてみよう!

〈5〉電子メールの活用・実用化に向けて

〈5〉の要点
(1)膨大な量の処理は手作業では無理
(2)絶対必要になるメールの活用術!
(3)Eメール専門の営業部隊を設置!
(4)営業社員への教育・研修が課題に

 膨大な量の処理は手作業では無理 

 磯部 次は、この討論会の後編のメーンテーマである〈電子メールの活用・実用化〉というところへ話を進めてまいります。

 大京の鈴木さんが前のコーナーの最後のところで、「24時間以内のリアクション」という言い方をされましたが、大京のような大会社になって膨大な問い合わせメールがあったときに、これの処理を全部手作業で行っていたら、24時間ぶっ続けで寝ずの番をしていても物理的に不可能になってしまう。
 そういう意味では、鈴木さんが社内で24時以内のレスポンス・システムを構築されたというのは、ほかの大手不動産会社でもまだそこまでできていないすごい事なのだなという気がしております。

 このコーナーのトップは、(株)アドパークの平田さんからお願いします。
平田さんのところでは、お客さんから(株)アドパークへ来る物件リクエストメールと、会員である不動産会社さんのところへ直接来る物件受付のメールなどがあろうかと思いますが、それを実際に取り扱われてどういうふうにお感じになっていますか。

 絶対必要になるメールの活用術! 

(株)アドパーク/平田 実社長

 平田 連絡があったら必ず返答をするという日常業務のルールと同様に、基本的にはメールを見たら必ず答えを返すということを徹底しています。
 これを徹底して行っていけば、お客様の物件リクエストに対して、条件が合ったものをメールで返していくというシステムの成果も高くなってくる。

 そうしないと、これは使っているツールが代ったからといって、別に人間関係のベーシックな部分は変わるわけではありませんので、大変な失礼になってしまう。
 ここで問題になるのは、やはりまだメールなどにちょっと習熟していないということだと思うのですが、今後は住宅や不動産のマーケットが縮小していくという経営環境の中でお客様を獲得するアクションとしてメールの活用は絶対に必要だと言えるのではないでしょうか。

 Eメール専門の営業部隊を設置! 

 磯部 次は、(株)大京の鈴木さんから話を伺いたいのですが、先ほど営業部隊のほうへ問い合わせが自動的に流れると言いましたが、営業部隊がそこまで対応できるようになるのにはどんなご苦労があったのでしょう。

 鈴木 私のお話が「電子メールが営業社員一人一人に直接届く」というように聞こえたかもしれませんが、現実にはそこまでいっていません。

 当社には、販売部門の統括部門に営業推進部というところがあって、メールはそちらのほうで担当者が受けて、営業部隊にはファックスで送っている。ちょっと原始的な流れでですけれども、これまでは営業担当はそのファックスを受けて、それからお客様に回答を送るというやり方でした。

 ところが今夏からは、電子メールというかインターネットへのアクセスに関しては、営業推進部門のほうに専門のスタッフを置きまして、まず資料請求がきましたら電子メールで「資料請求ありがとうございました」という返答を戻すというところまで発展しました。

 あとは資料を送って、着いた頃を見はからって、また同じ人がアクションを掛ける。社内ではいま、Eメール営業ということで専門部隊を作ってやっています。

 営業社員への教育・研修が課題に 

 大京には営業マンが約700名いますが、一人一人はどちらかというと、パソコンなどとは縁のない人が圧倒的に多い。
 特に30代、40代になると、出来るだけさわらないように努めている人もいますが、若年というか27〜28歳という層になるとキーボードにほとんど抵抗なく育ってきていますし、パソコンも自分で持っている人が多くなっている。

 当社の計画としては、いま一人一人に電子メールのアドレスを配付して、マン・ツー・マン・コンピューティングに持ち込みたいという計画があります。そして、その場合に内部でどういうプログラムを使うとか、パソコンを買った場合の費用対効果とか、このへんのシュミレーションはもう大体出来あがっていて、あとは実施の教育も含めてやれるところまできています。

 幸い事務企画というのはもともとマニュアルを作ったり教育をする専門の部隊ですので、そのへんのノウハウとか蓄積はありますので、あとは700名にのぼる営業社員への教育、研修というものを徹底的にやりまして、コンピュータ対応をやらない人は損をするという仕組みにして行きたい。

 しかし、インターネットは結果的にはまだ2%の上乗せ数字しか出ていない部分ですので、営業マンにとってはあまり興味のない部分でもあります。

 ところが、インターネットの利用は間違いなく21世紀には中心の課題になると思いますので、そういう点では今から乗り遅れないようにしておかなければならないでしょう。

 磯部 大京さんみたいな大会社がそこまでやっているのだから、中小企業ではもっと積極的対応が必要になるのではないだろうかというのが率直な感想です。

 ホームページで物件情報をどんどん更新してたくさん出していくことももちろん必要ですけれども、あとのフォローアップの道具として電子メールをどれだけ使えるようにしていくかという事が、営業促進の上で非常に重要なポイントになってくるでしょう。

 (株)ネクストの井上さんのところでは、会員になっていらっしゃる不動産会社さんはどの程度メールを活用されているのでしょうか。


〈6〉電子メール活用の現状と問題改善策

〈6〉の要点
(1)フェアの告知にもメールを利用!
(2)メールの利用によく慣れておこう
(3)アイディアで様々な形態が可能に
(4)受信メールもデータベース化しよう
(5)返事をすぐ出せるシステムも登場
(6)〈1to1〉のマーケッティングで
(7)自動マッチングの機能を活用して
(8)物件をたくさん集めるのが課題に

 フェアの告知にもメールを利用! 

 井上 クライアントさんの状況をすべて把握しているわけではないのですが、やはりある程度の規模のところですと担当者を決めていらっしゃいますので、先ほどみなさんが「鉄則だ」と一致しておっしゃっていたクイック・レスポンスを実行して成果をあげているようです。

 ところが、やはり1人とか2人とかで常に忙しいところでは、ちょっと厄介なメールが入ってくると返答までに2〜3日、下手をすると1週間は掛かってしまう。ここで、やはり成果に大きな差が出ているように思います。

あと具体的に「こんな使い方をしている」という会社がありますので、実例を紹介させて下さい。
 神奈川県の湘南地区で売買仲介を中心にやっていらっしゃる不動産会社ですけれども、年に1回必ず不動産フェアというのを開催されている。

今年は、これまでになんらかのアクションがあってメールをいただいたお客様を全部リスト化しておき、「フェアをやりますよ」というお知らせの一斉同報を行なった。
 その結果、メールで来場したのは30名で全体の来場者300名のうちの1割を占めた。

それ以外の告知は新聞の広告、折り込みチラシなどでした。それに対して「1割がインターネットから来ています」という点でいくと、非常にコスト・パフォーマンスが高い告知方法だと言えるのではないでしょうか。

 メールの利用によく慣れておこう 

 逆に、まずいケースというものを1つ申し上げさせていただきます。
 これは、まだメールに不慣れだったために起こったのですけれども、ある不動産会社の社長さんがお客さんのためによかれと思って、物件の写真と間取り図を大きくスキャナーで取り込んでメールに添付して送り付けてしまった。
 その容量がなんとメガバイト単位の大きさになってしまい、ちょっとうるさいお客さんだったようですけれども、「訴訟を起こすぞ」というようなクレームまできてしまったというケースもあります。
 こういう場合は、メールだけお送りして「興味があれば、どこそこのアドレスを見ていたければホームページに載っていますので」というようなご案内の仕方がよろしいのではないでしょうか。

 アイディアで様々な形態が可能に 

(株)ネクスト/井上 高志社長

 アイデアレベルでやってみて面白いなと思うのは、不動産へのニーズを持ってメールを送ってきたお客さんをデータベース化していけば、たとえばコーポラティブハウスみたいな形での新しい事業展開が可能になるかもしれません。

 メールでは、特定のエリアでの希望条件を持っていて、このような価格設定で物件を探しているという具体的な希望が入ってきます。
 そうした人たちの希望を聞いてある程度エリアを絞って開発案件をまとめられるようであれば、たとえばマンションの売り建てというような形での事業展開も可能になってくると思います。

 また当社では、会員企業にメールが入ってきた場合に、無料配布の専用ソフトの中で物件のデータベースを持っています。
 そこで、希望条件に合致するものがあるのかないのかという事をボタン一発で検索ができるようにしまして、該当物件があった場合にはその情報をまたボタン一発で送信するというような新しい仕組みの開発もいま進めています。

 受信メールもデータベース化しよう 

 物件データの鮮度を高く更新していくということについては、それを保証するのは作業の簡便性という事がどうしても必要になりますから、ボタンを押せば一発で更新してくれるし、日々の日常業務や管理もやっていけるようにしていかなければならない。

 それから、メールで希望条件なりが入ってきた場合には、それをデータベース化していって有効な利用ができるようにしていかなければならないでしょう。

 メールをお使いの方だとお分かりいただけると思いますが、現状では希望条件をいただいたりしたときに、受信メールというのは結局紙を1枚ずつ管理するのと同じで、全然データベース化されていません。
 そこで、それをたとえばどのへんのエリアの希望条件のお客さんであったというような抽出ができるとか、価格帯で抽出してみたりという利用ができるような仕組みをいま作っています。

 それから、会員企業がインターネットに接続した時に、端末の専用ソフトのほうでデータを更新していれば、「あなたのご覧になっているデータは更新されていますが、アップロードしますか」というようなメッセージで教えてくれるような仕組みも作っています。

 返事をすぐ出せるシステムも登場 

 磯部 私は、『リアルタウン・ジャパン』という不動産業のリンク集を中心にしたホームページを約2年半ぐらい前から一人で運営をしているのですが、電子メールでは苦い体験をずっとしております。
 そこに「何でも相談コーナー」というのがあるのですが、いろいろなメールが入ってきて、すぐに返事が書き切れなくなってしまうのですね。

 先ほど来、平田さん、井上さん、鈴木さんともにおっしゃっていましたように、まず「メールを受け取りました」と返事を出しておけばいいものを、一生懸命に考えて答えなければいけないと思っているが故に、返事が出せなくなってしまうのです。
 ですから、「あの返事を出さなきゃ」というプレッシャーが常にあります。

 恐らく平田さんや井上さんも、そういうことにならないために、「何でもいいからまず返事を出しておきなさい」というお話をされていたのだと思います。
 私が知っているところでは、オート・レスポンダーという簡単なソフトウェアがありまして、それはメールがきたら自動的に「ありがとうございました」という返事を出してしまう。

 そういうシステムをどのプロバイダーでも大体は持っていると思いますので、クイック・レスポンスの体制がとれていないところはそんなものも使ってみたらいかがでしょう。

 メールに関して、大京さんは『L-mail』という名称で非常に有効な展開をされているようですので、鈴木さんからその内容をもう一度ご紹介下さい。

 〈1to1〉のマーケッティングで 

 鈴木 『L-mail』の設計コンセプトでは、もとから1人1人のお客様を対象に絞り込んだ「ワン・ツー・ワン」というマーケッティングという考え方に徹してきました。

 これはどういうことかというと、96年の3月に当社のホームページのドメインを変えた時に100万円プレゼント・キャンペーンというものをやりました。そのときに、「希望マンションの受付を電子メールでも行えるようになりました」とPRして、「今後もメールでの物件情報を希望しますか」と聞きました。
 そういたしますと、「はい」と答えられた方が1,067名おりました。

 そこで、そうした人たちに検索をしてもらった情報を蓄めておいて、その条件にマッチした物件の部屋がでてきたら、その情報を電子メールで定期的に送ってしまおう。
 そういう事を狙って、こうした「ワン・ツー・ワン」マーケットの特殊性をコンセプトにして、『L-mail』という仕組みを作ってきたのです。

 自動マッチングの機能を活用して 

 当初1,067名から開始しまして、その後4カ月でその中から契約が41名でました。その後、『L-mail』ということではとくに宣伝をしなかったのですけれども、今年3月からまた『L-mail』2回目のキャンペーンというのをNTTさんと組んで、インフォビューローという新しいマルチメディアのツールの共同実験も兼ねてやりまして、その際また700名ほどが入会された。

 こうした登録会員が現在までに2,000名弱にのぼりまして、当社の部屋の物件情報とお客さんの希望している条件とをマッチングさせているのです。

 お客さんの希望は地域、沿線、間取り、面積と価格、これを私は5点セットと呼んでおりますが、この条件に当社のいま発売している部屋の情報をぶっつけて、マッチングが出来上がったものをプログラムに掛けると自動的に2,000人の一人一人に内容の違うメールが送られるという仕組みになっている。

 このシステムは97年の10月から正式に運転していますが、一回プログラムを作ってしまえば、費用は一切かからない。
 「ACCESS」というプログラムを使っていますけれども、ほとんど一人で回しているだけです。

 物件をたくさん集めるのが課題に 

 磯部 鈴木さんのいまのお話を伺って、「大京さんは、物件が山ほどあるからいいな。私のところは希望条件を書いてもらっても出すものがすぐになくなってしまう」というように皆様は思われるかもしれませんね。

 そして、もし私が中小の不動産会社の社長さんだったら、「みんなでたくさんの物件を集めて、ユーザーから希望が来たときにそれを検索して送れるのではないか」と考えるかもしれません。

 ところが、「みんなで集まってやる、あるいは業界団体でそれをやる」という事になっても、「A社の物件ばかりが消費者のところへいくことになって、X社の物件が全然消費者のところへ届かない。それだと不公平だ」という話がどこからか必ず出てます。

 結局、大京さんがやっているのと同じようなことを考えても話がまとまらなくてなかなか実際には実現しないというような状況も一方にはあるのかと思います。
 もし今後、物件数の少ない中堅の不動産会社が大京さんと同じようなことをやろうとすると、そこを突破できるかどうかというのが非常に重要なポイントになってくる。


〈7〉今後の業界はどう変化していくのか

〈7〉の要点
(1)ベースは人間だが早い取り組みを
(2)ユーザーの環境に合せたページを
(3)販売促進だけでない利用も検討へ

 磯部 最後の〈インターネットの今後の展開〉(個別展開と業界の変革)というテーマに入って参ります。

 今後、業界がネットワークに対してどのように取り組んでいくべきなのか。とくに、平田さんと井上さんはご専門の立場から見て、ネットワークというのは今後どうなっていくと考えていらっしゃるのか。そのへんのところを含めて、今後の予測としてお話しいただければと思います。
 最初に平田さん、いかがでしょうか。

 ベースは人間だが早い取り組みを 

 平田 私は、極めて基本的なことに企業や業界として取り組んでいっていただければ、インターネットは十分に効果が出ると思っています。逆に、それだけコンピュータに対する取り組みということを、業界のみなさんに期待しているわけです。

 大京の鈴木さんから先ほど自動マッチングの話がありましたけれども、確かにこれは非常に効果が高い。私どもも、『希望物件予約サービス』ということで、予約を受けたものに対して自動的に物件情報を消費者のみなさんに返す仕組みを作っていまして、これは非常に効果の高いものになっている。

 しかし、機械的にやっていることに対する問題点というのが、どこかでまた出てくるのではないかなという嫌な予感もあります。
 それは、現状ではいま機械的にやっている部分の物件情報の実態が、ちょっと掴み切れないということなのです。
 しかし、最後にはやはり人間と人間のコミュニケーションというものがベースになりますので、最初のきっかけは物件情報、商品の品質本位だということになると思います。
 ですから、インターネット時代がやってくると言っても、基本的なことはそう大きくは変わらないのではないでしょうか。
 ただし、時間的な効率化というのは徹底して図れますので、皆様はこれに早く取り組んでいただきたいということに尽きます。

「うちはインターネットを使わなくても既存の媒体で十分間に合っているから」ということを言われる不動産会社の方がよくいらっしゃいますが、十分にお客さんの来るところであれば、新しいネットワークを使えばもっと効率があがるわけです。
 既存の媒体を通じてお客様がよく来る立地のいいところと言うのは、インターネットを使ってもやはり反響が来ますから、それだけ早めに取り組む必要があるということです。

 インターネットでは少ない労力で多くの契約を成立させることができるということですから、まだ早いのではないかということではなく、早めに取り組んでいただくことが重要なのではないでしょうか。
 先ほども申し上げましたが、情報の品質という点では、なんらかの制度化、規格化が今後は必要になってくるという事が言えると思います。

 ユーザーの環境に合せたページを 

 磯部 (株)大京の鈴木さんは、成果が売上比率で2%しかないと謙遜されていましたが、新しいメディアでこれだけの成果をあげたというのはトップランナーだと思います。
 トップランナーを維持しながら、さらに品質を高めていくためにどのようなことをお考えなのか。あるいは社内をどのように変えていこうとしていらっしゃるのか。
 あくまでも、今後のビジョンということでお話をいただきたいと思います。

 鈴木 プレゼンテーションのツールとしては『部屋別検索』とか、『分譲予定』とか、『L-mail』とかいろいろあります。
 しかし、今後の課題としてはまずユーザー指向という事を考えていかなければならない。しかし、画像に凝らないということをまず貫いていく。

 これは一見矛盾するようですけれども、あまりデザインに凝っていると、凝りすぎてそちらにばかり特化していくという流れに陥ってしまう。ユーザーの中には、今でも3〜4年前のパソコンで主流だった14,400bpsというような閲覧スピードのモデムを使っていらっしゃる方もいます。ですから、やはり閲覧スピードが遅くなる画像などにはあまり凝らないで訴求力を高めていくようなバランスを考えていかなければならないでしょう。

 消費者に向けたプレゼンテーションという意味での、新しい情報に常に更新していくという考え方では、当社はいま1週間に1回更新を行っていますが、これをデーリー化していく。

 販売促進だけでない利用も検討へ 

(株)大京・事務企画部/鈴木 徳之課長

 ところで、どちらかというと当社のホームページは物件そのものを売らんかなの作りになっている。
 『L-mail』もお客さまに買っていただくまでの機能が重点であって、今後は買っていただいた後のフォローサービスもホームページで展開できるような体制を考えていかなければならない。

 マンションの場合は買ってから引渡しまで大体14ヵ月間ぐらいの期間があります。その間に中間金だとか設計変更だとかいろいろな手続きがありますが、こういう部分に関する情報提供が現在のホームページや電子メールではほとんどできていません。

 一人一人のお客様に、「こんどの中間金は何月何日にいくらです。口座はここですよ」というような形で、電子メールやホームページを通じた個別の情報提供というものが今後は絶対に必要になってくる。
 当社には、“ライオンズ・ファミリー”と呼んでいる22万世帯にのぼる購入者がおりますが、こちらに対するサービス提供も絶対に必要なものです。そのへんを、全部フルレンジでカバーできるようなWebにどう高めていくかと言うのが大きな課題です。

最近、バーチャル・モデルルームという事で、現地に行かずにしてモデルルールの中が見れるというコーナーも新設しました。
 ホームページでモデルルームを覗いてみたいというお客さんの潜在的なニーズというのは必ずあるはずですので、そのへんにもちょっと工夫を加えていきたい。

 また、ローン計算にしても家庭コンサルティングに近いものを含めて、ホームページの中でいろいろと新しい展開をしていかなければならないでしょう。
 さらに、マンション市場全体のデータベースを整理していく事も必要だと思いますし、消費者がほしいという情報を提供していけるようになれば、市場の将来はWeb系にかなり移行してくるのではないでしょうか。


〈8〉対応戦略の方向性を考えてみよう!

〈8〉の要点
(1)ツールを使えないのは非常にまずい
(2)情報の規格化が今後は絶対必要に
(3)規格化は効率性を高める手段にも
(4)業界全体のプラットホームも必要
(5)ネットワーク活用が急務な課題に

 ツールを使えないのは非常にまずい 

 磯部 次は、井上さんにお願いします。

 井上 今後の展開ということですが、私は業界が大きく変わると言っても今後、紙媒体というのは決してなくならないと思います。
 インターネットはいまやブームではなく発展期に入る兆しを見せていますけれども、すべてのものがインターネット置き替わるという時代は来ないでしょう。

 しかし、1つのツールとしてこんなに使いやすいものを、どうしてみなさんはもっと活用されないのでしょうか。

現状が実用化の段階に入っているのかどうかという判断は人によって意見が別れるかもしれませんが、総アクセス数に対して10%ぐらいのメール反響があって、そのうち10%ぐらいが成約になっているという数字割合は、平田社長のお話とか大京さんのデータを拝見してもそう大きく変わらない。

 こうしたことを考えますと、これはある程度もう実用化には入っているとも言えるのでしょう。
 しかし、本格的なネットワーク時代がすでにやってきているのかというと決してそうではなくて、これからもっともっと進展していくのではないかと思います。

 そうなったときに、インターネットやパソコンという便利なツールが使えないということでは、ユーザーサービスの面から見ても非常にまずい事になる。

 われわれの役割としましては、そういうものをできるだけ簡単に使っていただけるような情報のインフラとかソフトとかプログラムとか、そんなところでの貢献ができればというように考えています。

 情報の規格化が今後は絶対必要に 

(株)ヒロ・アンド・アソシエイツ/磯部 裕幸代表

 磯部 この討論会の前編<上>では、パネリストの皆様に〈インターネットへの取り組みの現状〉と〈ホームページ運用上の問題点〉を伺ってまいりました。
それから、後編の〈下〉では、〈電子メール活用のテクニック〉と〈今後の対応戦略〉について、討論して参りました。

 メーンテーマである〈インターネットの実用化への挑戦〉をめぐっては、情報の新鮮さ、更新によって新しさをどう保っていくかということが最初に問題となりました。
 それに加えて、ユーザーが便利に選択できる情報の量をどう確保するか。さらに、どこまでシステムを自動化できるか。あるいはまた、システムの合理化をどう進めていったらよいのかというような話もでてきました。

 それから、不動産情報の流通システムの上で川上から川下までのどこまでを担当するのかという非常に大きな戦略的な話もでておりました。

その中で、3人のパネリストから共通のキーワードとして「情報の規格化」というテーマが出ていたと思います。これは、恐らく次のようなことをおっしゃっていたのではないでしょうか。

 要するに消費者がインターネットのホームページで物件を探すときに、たとえば2LDK――これは不動産の公正取引協議会の表示の基準と同じような話ですが、2LDKといったときに何平方メートルなのか。あるいは1Kといったときに、何坪なのか。
これについては大体のイメージを消費者は持っていると思うのですが、そういった基準があるとユーザーはもっと便利になってくるのではないかといった意味だったのではないかと思います。

 技術がどんどん進化していくと、インターネットで「23区内の新築マンションの2LDKで、東南角部屋で3,000万から5,000万円ぐらいのものを見たいな」いう事になった時に、大京から三井から、地元のデベロッパーまでのマンションがホームページから全部自動的に検索されて出てくるというのが究極のシステムであり、たぶん数年後にはそうなっていくのだろうと思います。

 そういったときに、消費者がいろいろな希望条件を言いますと、それに対して各社が何か一定の基準、みんなで決めた基準みたいなものでデータベースを作っていれば、ユーザーは何のこだわりもなくそのWebの中から、自分に一番合った物件を見られるという状況になってくるでしょう。
 これは、何かを規制していくという意味での規格化という事ではなくて、不動産業界が力を合せて消費者のためにある種のプラットフォームみたいなものを作っていくという事になる。
 最後にその規格化というキーワードで、パネリストの皆様に話しをまとめていただけますでしょうか。

 規格化は効率性を高める手段にも 

 平田 そういう意味でのプラットフォームを作っていくというのは、非常に大事だと思っています。
 実は、井上社長と最初にお話ししたのもこの件だったのですね。

 井上 まさしく規格化ということで、「智恵を出しあっていかないといけないね」という話をしました。

 平田 しかし、なかなか競争の激しい世界ですので、難しさはあると思うのですが、データのあり方につきましてはどこかの段階で話し合いをしていかなければならない。
 規格化は、最終的には効率を高めていく。消費者に対しても業界に対しても効率を高めるということで貢献しなければなりませんので、そういった意味では今からすぐにでも取り組んでいかなければならない課題でしょう。

 業界全体のプラットホームも必要 

 鈴木 私は民間企業の立場ですから、ある意味ではどんどん先進的にやっていって、ほかの会社が追いつけなくなるようにしていく。
 そうした事を願っている部分もあるのですが、しかし、消費者の立場から見たら、規格化によって全体のプラットフォームを整理していくというのも一方では必要なことだと思います。

 最終的に何が競争なのかといいますと、マンションそのものの企画だと思いますが、やはり業界全体の利益という視点からは規格化よってユーザーの信頼を得ていくという事が必要ではないのでしょうか。

 ネットワーク活用が急務な課題に 

 磯部 最後のまとめになりますが、これは主として平田さんが提案されていたことですが、効率化ということがありました。
 そして、これは『L-mail』につきまして詳細をご紹介いただきました鈴木課長のお話に象徴される自動化ということでもあります。

 しかし、それが全部ではなくて、不動産の取引には人が常に介在するということを三方ともおっしゃっていました。
時代の流れは自動化できること効率化できることは、どんどん改革していかないと追いついていけない方向に向っているのだと思います。

 だからと言って自動化だけですべてが進んでいくわけではなく、必ず人の関わる部分というのは残りますけれども、少なくとも省力化、効率化できる部分はどんどんやっていかないと、会社自体の命運が危うくなっていくという時代に今後はなってくる。
ですから、今後は機械のできることと人のできることの棲み分けというのが非常に重要になってくるのではないでしょうか。そして、ネットワーク活用の実用化という事もますます急務な課題になってくるでしょう。
長時間の熱心な討論を、大変にありがとうございました。

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