<今月の住宅・不動産業ニュース>
SOHOにどう対応するか/見込まれる248万世帯のニーズ
98年10月〜11月号
SOHO――と言うと、まず「スモールオフィス・ホームオフィス」という注釈を書かなくてはいけないのかもしれない。しかし、実際にはその新しい勤務形態は急速に現実的なものになってきている。例えば、あるサラリーマンが自宅にいて、従来のような出勤を強いられずにそれまで以上の仕事をこなしていれば、これはもう立派なSOHOなのだ。 しかし、わが国では自宅で仕事をこなそうとする時に、3つほどの問題点がある。 第1は、これまでの住宅には在宅で仕事をこなせるほどの設備やスペースが整っていない ことだ。 第2には、従業社員側の意識が、自宅で仕事をこなせるほど向上していない事である。 第3には、雇用者側も、在宅勤務のメリットが測り知れないことであろう。 そこで、SOHO事情に詳しい池谷和浩氏のレポートをお届けする。 住宅産業新聞社から今年9月に独立した日米のSOHO事情に詳しいフリーライターの池谷和浩氏のレポートは、要旨を次のようにまとめられる。
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●アメリカでは2,500万人がSOHO 「SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)」という言葉が、最近ではかなり目に付くようになってきた。 パソコンが高度化し、インターネットなどの情報インフラ網が整ってきたことで、文字どおりの“在宅勤務”が新しい就業形態として現実味を帯びてきたためだ。 パソコンブームに乗って、この言葉を冠した雑誌も創刊されているほどである。 SOHOという形態がいち早く生まれたアメリカでは、すでに就業者のうち2,500万人がこの形態に当たると推定されている。これまでのわが国では日陰の印象があった在宅勤務だが、新しい住宅の使われ方として、今後注目する必要が出ていると言えるだろう。 わが国のSOHO事情を探る上で、まず現状から見てみることにしよう。 SOHOには、大きく分けて2つの形態がある。フリーランスで仕事を行う小規模な事業主と、企業に属しながら在宅勤務もしくは分散勤務(本社以外の小規模事務所で就業)するサラリーマンだ。後者のことをアメリカでは「テレコミューター」と呼んで、区別している。呼び名の由来は、通勤(コミューティング)を通信回線で行っている人、というものだ。 日本サテライトオフィス協会によると、SOHO先進国であるアメリカの場合、前者が1,100万人、後者が1,400万〜1,500万人存在する。合計で2,500万人以上となる。 では、わが国ではどうだろうか。後者の企業に属する在宅勤務を、通産省が「テレワーク」と名付けて推進しており、徐々に採用が始まっている。その規模は、週に一回以上在宅勤務をする人で、全就業者中で68万人という。日本のホワイトカラーは1,700万人だから、そのうちの4%に相当する。 日米の人口差は2倍程度なのに、テレコミューターの数は何と実数で22分の1に過ぎない。日本人は全就業者の約80%が企業に雇用されて働いており、今後も日本のSOHOシーンは「テレワーク」が中心になると予想できるのだが、今のところはまだ根付いていないのが現状と言えるだろう。 ●日本でSOHOが遅れている理由 これには、日本の住宅が就業に適する広さを確保できていないことが第1にあげられる。 日本サテライトオフィス協会の担当者は、「SOHOでは高齢者や小さい子供のいる主婦でも高度な仕事を行えるが、例えば子供のいる家庭では、子供にジャマされる場合も出てくる」と話している。 また、企業側でも、ホワイトカラーの評価を勤務態度や残業時間数で測っており、上司とのコミュニケーションがなくなれば評価が下がるのではないか、と考えるサラリーマンが多いのも一因。 ボーナスの査定などがその顕著な例だ。労働省の大臣官房政策調査部が平成6年に行った調査によると、一般職では89.7%の企業が「勤務態度」と回答している。また、「勤務実績」が86.8%、「職務遂行能力」が75.2%などとなっている。「勤務実績」とは、多くの場合残業時間数。 また、「職務遂行能力」は学歴を指すケースが多い。つまり、直接の業績には何ら関係していない」(前述の同協会担当者)。 こうした日本企業の社員評価方法が、大きな阻害要因となっている事は明らかだ。 ただ、こうした社会通念となっている企業のあり方は、少子化社会を目前にして変貌し始めている。 同協会の「日本のテレワーク人口調査」によると、2001年までにテレワークを「導入したい」と回答した企業が全て導入した場合、テレワーク人口は今の3.7倍の248万人になるという。 住宅業界としては、“248万世帯のニーズ”と言い換えてもいいだろう。調査によると、特に仕事を身に付けた30歳代のサラリーマンからSOHOの関心は高く、30歳代だけでは回答者の75.5%がSOHOを「やってみたい」と回答している。 |
●SOHOに適した住宅とは何か 248万世帯のニーズが見込まれ、今後の主要な住宅取得層である30歳代からの関心が高いことは分かったが、今度は住宅がそれにどれだけ応えられるかどうか、という問題が依然として残る。 果たして、SOHOに適した住宅とはどういうものなのか。 現在注目されている「SOHO」が、パソコンの発達を背景として生まれてきた分散就業であるだけに、単純に考えればホワイトカラーの仕事が中心になるだろう。 だが、そのホワイトカラーの就業に適した住宅空間というのは、ほとんど形になっていないのが現状だ。 唯一、ニューオフィス推進協議会が平成8年に「オフィスは多様な選択の時代へ〜高度情報化社会とオフィス革命」という報告書をまとめており、その中で分散オフィス化について触れて、SOHOに対応する内容も扱っている。 同報告書が「ホームオフィスの機能と役割」としてまとめている内容としては、ホームオフィスの形態として専用型、兼用型、共用型の3種類を挙げている。 そこで、同報告書から望ましいSOHO空間の指針を引用してみることにしよう。
なお“オフィス環境基準”とは、同協議会がまとめている望ましいオフィス空間の指針である。 多くのSOHOを求めるユーザーは、やはり専用のSOHO空間を欲しいと思うのだろうが、最低6畳以上(2畳=1坪で換算)の広さとなると、都市圏の住宅では多少厳しいかも知れない。 逆に、インターネットによる通信などで分散オフィスを構築する場合、地価の安価なエリアではビジネスチャンスが生まれることになるだろう。 ●SOHO生活者のニーズ吸収がカギ ここで問題になるのが、現状ではそのニーズを読み切れないということだ。日本では分散就業という概念が根付いていないために、SOHOにはさまざまな形態が混在しており、一概に括ることができないのだ。 例えば、前出の「テレワーク」では、週ー回以上の在宅就業をカウントしていたが、そうすると週休2日の場合で週に4日は通勤しているわけであり、就業地から遠すぎる住宅では不都合が出る。これからSOHOが浸透する中で、徐々に“SOHO生活者”というユーザーたちが増えていくことになるが、このユーザーのニーズをどこまですくい取れるかが鍵となるのではないだろうか。 |
●SOHOという名前だけが先行 「とにかく今の“SOHO”というのは、弱電メーカーからサラリーマンに総務部を通さないでモノを買わせるためのお題目のようなもの。日本独特のSOHO文化を考えていかなければ」と話すのは、97年12月に学識者やSOHOに関心の高い人達が集まって設立された「SOHO研究会」の主要メンバーの一人。 パソコン周辺機器などでSOHOの名が冠せられ、知名度だけが先行しているものの、実際に建築・家具デザインに落とし込むまでの経験はほとんどないわけであり、こうした状況はやむを得ないとも言える。 例えば、パソコンデスクなどでは「SOHO用」などというものが数多くラインナップされているわけだが、これが実際に住宅のインテリアとマッチするとは限らない。また、パソコンやパソコン周辺機器はどんどん便利になっているが、便利なものが増えれば増えるほど、それらをつなぐケーブル類はどんどん雑然となっていく。これはアメリカのSOHOシーンでも問題になっていて、「スパゲティシンドローム」などと皮肉られている。 ●99年2月にSOHO WORK99 筆者もパソコンや周辺機器類が好きな方だが、パソコンデスクの裏側は覗きこみたくないというのが本心だ。 最新のパソコン向け家具では、ケーブルをひとまとめにしてしまうような工夫がされているものもあり、こうした動きがさらに住宅のデザインにも踏み込んでくると、「SOHO住宅」と言えるのかも知れない。 すでに積水化学工業が、一戸建て住宅にパソコンのネットワークを構築するためのケーブル(10BASE−Tケーブル)を事前配線し、各部屋に情報コンセントを用意した商品を発売しているが、これなど正にその第一歩と言えるだろう。 わが国のSOHOシーンはこのように混沌とした状況ではあるが、その指標として99年2月24日から3日間の日程で、東京・池袋のサンシャインシティで初めての展示会が催されることになっている。 『SOHO WORK99』と題されており、産経新聞社と日本工業新聞社が主催しアドバイザーグループとして前出のSOHO研究会が全面協力して準備に入っているところだ。まだまだ弱電・家具メーカー主導の感が強いSOHOだが、こうした動きをきっかけとして、住宅が舞台となる新たなニーズとして、住宅産業界からも積極的なアプローチを期待したいものである。 |
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